心霊写真の真相C
世界中で目撃されている幽霊
幽霊の目撃談
仏教誌の『大法輪』に、葛西紀枝という人が次のような文を載せている。
「それは昭和14年3月にあったことです。当時、東大生だった友人6人と連れ立って、私は伊豆の東海岸に遊びにいったことがありました。熱川温泉に着いたのが午前10時ころ、それから岩風呂に浸った後、みんなと一緒に海岸へ散歩に出かけたのです。海に近い砂地に物干場があり、その側を通って渚に行こうとしました。
その時に、私の目に異様なものが映ったのです。
黒っぽい衣類を着て、その襟のところから毛髪を垂らしている女性の姿でした。ありありとこの肉眼に見えているにもかかわらず、奇妙に現実感と別のものがあり、白昼夢のようであって、しかも実在感はハッキリしているというおかしな矛盾した念いが私の胸をかすめたときには、友人達も同じ気持であったらしく、みんながその場を過ぎて振り返るようにして『あれ、なんだったかしら…』、異口同音に口を出たのはそれでした。
私達が宿に戻って一休みしておりますと、お茶を運んできた女中さんが、『この先の浜で、誰かが投身自殺したんですって、死体はまだあがらないらしいんです。気味が悪いですわね』とお茶を並べて出てゆきました。午後からまた海岸の方へぶらぶらと行ってみますと、土地の消防団らしい人達が右往左往しています。
一人をつかまえて訊ねてみましたら、同じ海岸づたいの片瀬というところで、たった今、女の死体があがったというのです。なんでも、その自殺者というのは、支那事変で戦死した夫を慕うあまり、かつて新婚旅行で来たこの思い出の土地を選んだのだとのことでした。私はひょっと気になって、死体は『どんな着物でした』と訊ねたところ、午前中に見たあの時の女性の衣類の縞柄とぴったり一致しており、毛髪だけで顔こそ見えなかったのですが、大体の姿かたちは、水死体のその女性とまったく符合するようです。
みんなは宿に戻る道すがらも、黙りがちで、ときどき『そんなことってあるもんだろうか?』と、つい数時間前、自分達めいめいの実見した事実が、晴れわたった春の、しかも午前中の出来事であったため、よけいに割り切れぬ思いとなって、そんな言葉を呟き合うばかりでした」。
この文章には、見た者でしか書けないリアリティーと迫力がある。東郷平八郎と共に聖将と呼ばれる明治の代表的軍人、乃木希典陸軍大将も、日露戦争の旅順攻撃で亡くした息子の幽霊を見たと語っている。乃木大将は、明治天皇の葬送の日に天皇の後を追って自決した謹厳実直な人である。そんな人がいい加減なことを言うはずがないのだから、見たものを見たと正直に言ったのだろう。
この他にも幽霊の目撃談は、古今東西を通じて数多く存在する。
それは数えるに困難なほどである。
幽霊は実在する。
三世も実在する。
これが仏説であり、真実なのである。
引用元
「死後の存在」
著者: 中根繁
発行所: 真流一の会
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